前回までは、高齢犬の夜鳴きについてお伝えしてきたので、今回は猫ちゃんの夜鳴きについてお伝えします。
高齢になると確かに認知症で鳴く場合もありますが、高齢猫の夜鳴きで圧倒的に多いのは”甲状腺機能亢進症”という、ホルモンの病気です。
- 夜中に発情のようにワーワー鳴く、騒ぐ
- たくさん食べても痩せる
- 目がギラギラしている
こんな症状がある猫ちゃんの飼い主さんへ、猫の甲状腺機能亢進症についてご説明します。
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どんな病気?
甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)とは、甲状腺という喉のあたりにあるホルモンを分泌するための器官が、甲状腺ホルモン(新陳代謝を促進するホルモン)を過剰に分泌してしまう病気です。
症状は?
10歳以上の高齢の猫ちゃんに多い病気です。
7歳以上の猫の8頭に1頭の割合で、この病気を持っているそうです。
- 大きな声で夜鳴きする
- 行動が活発になる
- 攻撃的になったり、逆に甘えん坊になったりする
- 水をたくさん飲む、排尿量が多い
- 毛づやが悪くなる
- 脈(心拍)が速い
- 目がギラギラしている
- たくさん食べるのにどんどん痩せる
- etc…
なかには食欲が落ちたり元気がなくなったりと↑のお伝えしている症状とは逆の症状があらわれる猫ちゃんもいます。
診断方法は?
血液検査で、甲状腺ホルモンの数値を調べると診断できます。
T4(サイロキシン)の血液中の濃度を測定します。
T4が明らかな高値(4.0μg/dl以上)の場合、甲状腺機能亢進症と診断されます。
ただし甲状腺機能亢進症により、慢性腎不全や肥大型心筋症などの病気が併発していることが多いため、甲状腺ホルモン以外にも、一般的な血液検査や超音波エコー検査、レントゲン検査などを行って他の病気が隠れていないかチェックする必要があります。
治療方法は?
- 甲状腺ホルモンの分泌をおさえるお薬を飲ませる
- 甲状腺機能亢進症専用のフード(療法食)を与える
- 甲状腺を摘出する手術を行う
ほとんどの場合は、投薬治療になるかと思います。
病気を発症するのが高齢の猫ちゃんが多いということもあり、外科的に手術を行う子は私自身はあまりみたことがありません。
甲状腺ホルモンの分泌をおさえるお薬を飲ませる
投薬を中止すると、またホルモンの数値が上がってしまうので、生涯薬を飲ませる必要があります。
昨年か今年初め位に、甲状腺機能亢進症の猫のための薬”チロブロック”が発売されました。
今まではこの病気の猫ちゃんには人間用のお薬を処方していたのですが、錠剤の大きさがとても小さくなり、猫ちゃんもたいへん飲みやすくなりました。
今飲んでいる薬の量が合っているか、足りなくないか、逆に効きすぎてしまっていないか、定期的に血液検査を行う必要があります。

甲状腺機能亢進症専用のフード(療法食)を与える
甲状腺のためのフードは今のところヒルズの”y/d”のみになります。
薬をどうしても飲まない猫ちゃんには、フードを与えるという方法もあります。
逆をいえばこのフードを食べる子であれば、薬は必要ありません。
◆ヒルズ プリスクリプション・ダイエット(特別療法食)〈猫用〉y/d(2kg/156g)
- ヨウ素の含有量を厳しく制限
- 低ナトリウム・リン含有量の調整、タウリン、高レベルのL- カルニチンを配合
- 高レベルのオメガ-3脂肪酸を配合
ドライフード(2kg)
缶詰(156g)
ただし、フードの場合はおやつの制限があったり、途中で食べ飽きてしまったりと私の職場では食べてくれる猫ちゃんは多くないです^^;
さいごに
この病気は猫ちゃん自身は元気にみえるので、一見わかりにくい病気です。
飼い主さんの中には、”うちの子は年齢の割に元気だ”と捉えている方も少なくありません。
予防ができる病気ではありませんが、薬を飲むことで症状をおさえることができます。
治療をしないでそのままにしていると、心筋症を発症してしまったり、腎不全が悪化してしまうこともありますので、高齢期に入ったら、定期的な健康診断でチェックするようにしましょう。
今回の内容が、高齢猫の夜鳴きでお困りの飼い主さんへ参考になれば嬉しいです。
最後まで読んでくださりありがとうございました!